大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)375号 判決
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〔事実と判断〕原告は、訴外人がその所有の建物につき、右建物の登記簿上の所有名義人である被告から所有権取得登記をするに必要な書類一切を受領していながら、債権者から差押えを受けることをおそれて右登記手続をしないため、原告の同訴外人に対する貸金債権等を保全するため同訴外人に代位し、被告に対し右建物の所有権移転登記手続を求めたのが本訴である。被告は、口頭弁論期日に出頭しなかつたが、「被告の請求を認諾する。訴訟費用は原告の負担とするとの裁判を求める。原告の訴外小泉に対する債権については不知、本件建物については、原告主張のとおり、被告名義の所有権取得登記を受けたが、その後右小泉と合意の上、原告の小泉に対する貸金全部の支払いをうけたので、同人に対し、本件建物につき小泉名義の所有権取得登記をするのに必要な委任状、印鑑証明書、その他の書類を全部交付してある。甲号各証の成立は認める。」との記載をした答弁書が擬制陳述された。裁判所は、右答弁書の「原告の請求を認諾する」旨の記載事項は擬制陳述の対象となり得ないものと解して本案の判断に入り、当事者間に争いのない事実から訴外人の被告に対する登記請求権のあることを認めるとともに、被告が同訴外人に交付した前記登記に必要な書類中、印鑑証明書が有効期限を経過していること、本訴が債権者代位権による訴訟であることから、原告から被告に対し改めて所有権移転登記手続を請求する利益と必要があるとして原告の請求を認容したが、訴訟費用については、次のように判断してこれを全部原告に負担させた。
「原告が債権者代位により本訴を起したのは、債務者である訴外小泉勇と被告との合意により、小泉が被告から所有権移転登記に必要な一切の書類の交付をうけていて、小泉としては、いつでもみずから登記手続をなし得たのに、同人がこれをしなかつたことによるのであつて、いささかも被告の不作為ないし懈怠に原因するものとは認められず、弁論の全趣旨からみて、被告は、現在でも適法な権限を有する者の登記手続請求には、いつでも応ずる意思をもつていることが明らかである。そうすると、原告にとつては、その小泉に対する債権保全のため本訴を提起する要があつたにせよ、本来登記請求権を有する右小泉にとつては、その権利の伸長のため本件同様の訴を提起し判決を求める必要はなかつたわけであり、訴訟費用としては、訴状貼用印紙代が大部分を占め、債権者代位権の証明に要した費用はごくわずかにすぎない本件においては民訴法第九〇条の法意により、原告に訴訟貸用の全部を負担させるのが相当である。」